君がいないのに

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カーテンの隙間から漏れる光を見ている

時折何かが通りすぎる影が見える

色のついた影だ

嗚呼あの日僕は影だった

色のついた影だったなって

なつかしさに胸が締め付けられる

 

 

部屋の空気は冷たくて

僕は毛布から出ることができない

外は案外あたたかいかもしれない

君が連れ出してくれるなら出かけるのに

どうすればいい

君がいないのに

 

 

腹は減ってない

でも食べないと死んでしまうだろう

でも何を食べればいい

君がいないのに

テレビをつけてみる

うるさくてボリュームを下げた

部屋の中を光がちらちらする

消したらまたまっくらだ

 

 

そとにいこうか

きっと草の匂いがする

もしかしたら今日あたり

陽炎がゆらゆらしているかもしれないぞ

意外と夕方には雨が降るかもしれないし

でも傘を持つかどうかなんて

考えることもないさ

君がいないのに

 

 

サングラスをして

帽子をかぶる

君が買ってくれたキャップ

風呂に入ってなくてもわからないだろう

身体が臭う気もするけど

きれいにしてどうなる

君がいないのに

 

 

思い切って外に出る

地面ばかり見たくなるから

わざと背筋をのばして歩く

こどもたちが通る

ひとりが笑いかけてくる

僕も思わず笑いそうになるけど

すたすたと先を急いだ

こどもがかわいくたって

君はいないんだぞ

 

 

いっそのこと遠くへ行こう

当てもない方がいいけど

たぶんそうもいかないんだ

だけど高速を飛ばせば

少しは気晴らしになるかな

でも後ろに逃げていく風景に

なんの未練もないのは

君がいないからなんだろう

 

 

シートを倒して目を瞑る

少し眠りそうになる

ここはどこなんだろう

君に尋ねてみたら

ちゃんと教えてくれた

ほんとうは地名なんか知りたくない

君の声が聴きたいんだ

でも消えた

全部まぼろし

 

 

シートを起こして

涙を拭く

泣いたって意味はない

君がいないのに

 

 

 

 

ねえ

帰ってきて

 

 

 

 

 

 


辛くなって前に書いていたものを公開した。

寒い季節だった気がする。

読むと余計つらくなるね。