ハナミズキ

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あのちっぽけな庭に生い茂る草は

隣家に放置された木々と見分けがつかない

もう誰にも見向きもされないが

毎年いくつかの花をつける

 

 

あなたが「ハナミズキかしら」というので

僕は「テッセンだよ」と言う

ハナミズキならどんなに良かっただろう

積もった花びらが

ひとときでも安らぎをくれただろうに

 

 

僕たちは花を見て

川を見て海を見た

大きな橋も渡ったし

長いトンネルの中で笑いあった

 

 

でもあなたはまた

遠くへ行ってしまう

望むものを差し出したはずなのに

「いまは要らない」と言う

 

 

あの沈む陽の光を

僕はまたひとりで見るだろう

目を輝かしたあなたは

ただの通りすがりか

もうきっと忘れている

あの空のさびしさも

僕の涙も

 

 

 

あの花がハナミズキなら

どんなに良かったか

あの庭には

醜く草が生い茂る

僕はもう庭に出たくない

 

 

 

もう花も見たくない