太々しい

Photo credit: Paul Keller on Visualhunt

 

 

 

美しいとあなたが言った僕の顔

鏡で見ると美しくはない

思ったほど弱々しくはなく

思った以上に太々しい

あなたは何を美しいと言ったのか

 

 

 

あなたの指が頬に触り

顎を回って唇に届く

僕はただ静かに目を閉じる

好きよ大好き

耳元で声がする

 

 

 

あの頃の僕の顔を

僕も好きだった

でも今は

見るのも嫌だ

ただ老いぼれやつれて

それだけじゃない

太々しいんだ

こんなに怯えて震えているのに

 

 

 

あなたが見ていたのは

僕の幻だったのか

美しい僕なんて

最初からどこにもいない

小さく背を丸めて

地面をじっと見つめて

かすかに嗚咽を漏らす

醜い姿

 

 

 

それなのに

鏡の中の僕は太々しい

憎らしい顔でまっすぐ見てる

涙を隠しているなんて

誰にもわからないだろう

 

 

 

僕はこれから

あなたの思い出を捨てる

一枚ずつはぎ取って

身体を削っていく

そのうち僕は

あなたが僕を捨てたことも忘れる

ただ痩せこけて

太々しいだけの男が

こっちを見ている

 

 

 

美しいとあなたが言った僕の顔

その声を目を閉じて聞いたあの日

僕はその時から

失い始めていたのだろう

そして今

完全に

完全に