Photo credit: Šarūnas Burdulis on VisualHunt.com
パーキングメーターにコインを入れて
僕は高層ビルを目指す
無機質なエレベーターから
無意味なほど大きな吹き抜けが見える
無表情に書類をやりとりして
僕はまた外に出る
つまらなそうな会話をしながら
勤め人たちが足早に歩く
都会のど真ん中で
お気に入りの小径に入る
小学校の裏手を囲み
巨大なイチョウから黄色が降る
子どもたちの声が響き
スズメやセグロセキレイが戯れる
他に人影は少なく
眩しい陽光と冷たい空気が僕を包む
僕はふとつぶやいた
「奇跡はある」
寒いのに汗をかいている
次のビルはエスカレーターだ
また書類をやりとりして
事務的に会話をする
なけなしの金を払っても
大波にさらわれ何も残らない
それでも僕はもう一度つぶやく
少しだけ大きな声で
「奇跡はあるんだ」
もう一度イチョウを見上げる
子どもたちは遠くにいる
この凛とした空気と
気にもせず過ぎる自転車たち
けたたましいエンジンの音
すべてをやさしく見下ろしている
誰かが気に留めることもないのに
あなたがくれた
待ちわびた言葉
あの日と同じ囁き
「好きよ大好き」
世界を変える言葉
うまくいかないことはたくさんある
変えたいのに変わらないこと
欲しいのに手に入らないもの
だけど僕の頭の中でずっと鳴っている
あの言葉が
見慣れた景色の中を走っても
今日世界は新しい
なぜなら奇跡はあるから
あの言葉あなたのほほえみが
僕を導いてくれる
奇跡はある
奇跡はあるんだ